でも、これしかないと、わたし | 山本茂伸
青く水気を含んだ煙が、細く空に登る
風になびきながら、大気と混ざり消えて
空がどんなに高くても、わたしはここに
真理がどんなに深くても、わたしはいるだけ
梵鐘の音も、真理を語る声明も、
深みも、高みも、言葉だと思う
角砂糖のような身体と、朝に孵化した蜉蝣の心
知り得たものはすでになく、知り得るものは遠ざかる
3000年前人は心を知り、迷い、すがった
語る人が生まれ、苦が刻まれる
ただ、生き、ただ死ぬことができない時代、心があるから
大気圏まで届く言葉の、重層的な逃れがたさ
救われるはずが、重みに耐えかねて手放す、わたしはと思う
もぎ取られるものもなくなり、体重の重さだけの重さ
軽いと感じるわたしがいて、空が見える
これで良いかどうかも、分からない
でも、これしかないと、わたし
空がどんなに高くても、わたしはここに
真理がどんなに深くても、わたしはいるだけ



