かみ様の涙|山本茂伸
虚な目をしていると蔑(ないがし)ろにされるので、大きく目を見開いた
ダッカが浮かぶ、テルアビブが浮かぶ
違う違うと、もっと大きく目を見開いた
陥落するサイゴンの映像と
枯葉剤に人が逃げ惑う
私は目を見開いていったい何を見ているのだろう
多くの英雄が独裁者となり
科学が生物の能力を奪い
薬害は教訓という言葉で飾られていた
多くを求めた若者たちの喘ぎが彼方に消え去る
軽く目を閉じて足元に目を映す
長い影と、季節のわからない風が流れる
高所に順応するように希薄な自由になれてしまった
分断と階層は自明の理という空気を共有していた
防衛のために作った盾は大きくて支えきれない
抑止のために作った矛は凶暴すぎて自身をも傷つける
虚な目をして蔑ろにされることが唯一の抵抗かもしれない
棄てられ民の光だけは感じることができる
当てもなく砂埃の中を歩いた
残照の中に川のない橋が浮かぶ
暗渠にかかる橋の欄干に
きつね顔の神様が座っていた
流れ星のように
神様の透きとおった白い頬を
輝く涙がすっと流れ落ちた
すまない、私は自由を与えたつもりだったのに
と声を詰まらせた



