私は泣くことを忘れた|山本茂伸

言葉が止まり
沈黙が流れる

私は泣きたいと思った。
大声をあげて
肩震わせ
泣いてみたい

最後に泣いた日を思い出せない
泣き方が思い出せない

幾重にも重なった愛憎の翼が
くるくると、くるくると回りながら
私のもとを去ったとき
私は泣くことを忘れた。

幾度、初雪を眺めても
去ったものは戻らなかった

凍てつく川の上で
冬の日の影を落として
強く足踏みをする

厚く閉ざされた氷の上で
私は知る
凍てつくものが心にもあると
春を待つものが心にもあると

泣いてみたい
大声上げ
肩震わせて

沈黙が止まり
言葉がながれ、今日もまた一日が始まる

2025年10月06日|ポエムポスト:ポエムポスト