雌猫の遠吠え|久利摩紀子
そう
昔から私は
掻き立てる人でありたかった
性的に
婉曲に
ただ
掻き立てる相手は
私が掻き立てたい相手以外であってはならない
他のものは私に興味など示さなくていい
そして
私が掻き立てたい相手は
必ず掻き立てられなければならない
そして心に消えない傷を負わなければならない
その傷がどうなるのか
私には知るよしもない
つけたくて仕方がなかった
傷は
残ってくれているんだろうか?
傷は消えていない
まだ重さがあり
まだ痛みがあり
景色が色褪せない
青い絨毯
私は傷をつけたいのだ
本当の傷だけを
たまらなく甘美な
消えない傷を
私はその傷をつける凶器を
生み出すことができるか?




